一流料亭に学ぶ
昨日、日本を代表するある有名料亭で会食がありまして、お客さんと一緒にがんがん飲んで飲んで飲み過ぎて、朝だけやや二日酔い気味でした。この料亭、創業300年の伝統を裏付ける見事に趣のある建物でして、木造の三階建などめったに見られなくなった今では、その外観の古さと大きさには、ある種畏敬の念さえ感じるほどです。一席○万円の懐石は、正直それほど感動するようなものではなかったのですが、さすが料亭という見栄えの美しさと材料の良さには楽しさを感じますね。料理の演出も凝っていたし。
ここの大女将は、豪傑ともいえる有名な人物で、わたしもたくさんの逸話を聞いたことがあります。
・英国の故ダイ○ナの接待のため、外務省が予約を入れてきました。ところが、直前になって警備上の都合から(いつも言うことは同じだな)全館貸し切りにしてほしいというのです。料亭の部屋はどこも一続きになっていまして、襖越に隣で遊んでいる声や音がかすかに聞こえるのがまた風流なのですが、要人が来るときにはプライバシーの守られた四方壁の部屋に入ることになっていて、声がもれたり他のお客さんと顔を合わせることはありません。しかし、外務省の担当者はすでに他の予約が入っているのにキャンセルさせて人払いしようとしたわけです。そこで大女将は「うちのお客さんを信用できないなら来てもらわなくて結構」と、きっぱり断ったそうです。外務省の役人は「今回のことは覚えとけよ」と捨てぜりふを言って帰ったとか。バーカバーカ!
・昔ロシアの外相だったシュワル○ゼが来たときは、ものすごく気に入ったので女将に「なんでもいいからほしいものをあげよう」と申し出たと言います。すると女将は「ほれやったらあんた、北方領土を返しておくれやす」。外相「むむむむむむ・・・」;
・玄関には女将の誕生日毎に送ってくれるという北野武の作品である大きな絵画(和風建築に全く似合わなそうでどういうわけかぴったりハマる絵でかなりうまいです)が飾ってあります。
・千と○尋の・・・の湯婆ぁばのモデルはここの大女将らしい。頭の格好と風貌は確かにそっくり。本当です。席に挨拶にこられたときに自分でデザインした千社札を持ってくるのですが、そっくりの似顔絵の横に「湯バーバー」と書いてあります。
偉そうにいうつもりはないのですが、若造のクセして料亭やお茶屋に比較的慣れているわたしとしては、店によって緊張すると言うことは全くないのですけど、慣れていない人がいくとかわいそうなほどの店だと思います。大企業のエリート社員でも接待で使うときはほぼ例外なくいわゆるカチコチ状態だとか。これは、店の格式が高いからというよりは慣れの問題でしょうね。
それから、日本料理を食べるときはマナーについて最低限の勉強をしておくべきだと思います。
・渡し箸(食器の上に箸を置くこと)はしない。必ず箸置きを使う。箸の取り方、置き方でだいたい程度がわかります。一流割烹と一流料亭では勝手が違うことを忘れないようにしたいと思います。高級割烹のカウンターでは多少の作法違いは許されるでしょうが、料亭で他人と差し向かいで食べているときに、客など同席者のほうに箸先が向いているのはいやな気分がするでしょうし、高価であろう器の上に箸を置かれると器が傷みます。
・とりにくい料理は器を持って食べる。まさか盆の上に器を置いたまま片手で料理をかき込むような下品な人は少ないでしょうが。
・箸を口に運ぶときに手で受けてはいけない(手皿がいけないことは意外に知られていないが、最悪に近い行為)。
・汁物は、まず椀を両手でもって汁を飲む、次に箸で具を食べる。飲む、食べるを使い分けて。
などなど。渡し箸なんかはそれほど汚いことだとは思いませんが、これをマナーと知っているかどうかは、はっきり言って人間の器の程度を知らない間に見せてしまいますので注意しましょう。それから「細かいマナーなんてビビッているように見えるから」などと間違っても大物ぶってはいけません。一流の店では、女将さんなどのホステス・ホストにとって若い人はどうがんばってもただのハナタレ小僧(わたしもそうです)で、上に書いた大女将の例でもわかるように政治家であろうと芸能人であろうとそんな肩書きなどなーんとも思ってはいません。若い人と言っても、20代30代の人たちだけではないですよ、40代から50代前半でも若造に違いありませんから。とくに、なんにも知らないくせになんでも知ったかぶりしたがる40代のあなた!「課長!」とか「部長!」と呼ばれてうれしそうにエラそうぶるのをやめろって。「女将はいないのか?」なんておまえの言える立場じゃないだろ?やはり、真の大物でない限りきちんとマナーを知っていてそれを守ることがこの人はきちんとした人だという好印象を与えることにもなります。そして意外とそういう人は少ないのですよ。そう、「正しいマナーを勉強するだけで、風格が身につく」のです。
先日も、ある外資系有名ソフトウェア企業の社長と懐石を食べていましたら、懐石のマナーなどなにも知らないんですね。それはそれで別にかまわないですが、社長という立場にしてそれでは一発で底の浅さを感じますし、情けなくもあります。エリートビジネスマンの皆さん、真のエリートであり続けるために、料亭の敷居の高さなど屁とも思わぬ風格を身につけましょう。まずは、マナーの基本を学んでみてください。高級料理を目の前にしても、楽しさが全然ちがいますよ。
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