泥棒に入られる・・・逮捕!(後編)
これを読まれる前に、必ず前編(上のコラム)を読んでください。でないと意味わかんないと思います。
(前回から続く)次の事件は、それからすぐに起こりました。
朝 起きてご飯を食べるため集まっていると、お父さんが窓を開けて柔軟体操を始めました。その時「あれ?おーい、外からなんか変なにおいがするぞ。あ!これ、なんだ?あっちゃー、犬のフンじゃないか、しかもデカいしすごいニオイだぁぁぁ死ぬ~」もう、家族中が大騒ぎになったことは言うまでもありません。前代未聞、家の庭の片隅、建物の真ん前にどか~んと落とし物があるじゃないですか。それもほんと、ほんとうにすごいニオイで全員即死しかけましたもん。
夜お父さんが帰ってくると、ずーっと黙ったまま何か考え事をしていて、食事が終わると話し始めました。「あのね、ボクいろいろ考えてみたんだけど、朝の事件、どうやら泥棒が入る前触れだと思うんだよ。というのは、昔泥棒が盗みに入る前に運がつくように事前に家のどこかにンをしたって聞いたことがある気がするんだ。どうしようか?」それを聞いた僕らは大興奮、大喜び、「やたーっ、ついに泥棒を捕まえるチャンスができたじゃん!」とはしゃぎ、寝るまでの間に作戦を立て始めました。
僕らの立てた作戦は、友達のうちに置いてあった警報機を使うというものでした。スピーカーのついた小さな箱から紐が出ていて、その紐を引っ張るとものすごい大音響でベルが鳴り響くという大変迷惑な機械です。まず凧糸を買ってきて、墨汁に漬け込み、糸を真っ暗にして暗闇に溶け込むようにし、その糸を玄関の至 る所に張り巡らせてブービートラップ(=Booby-Trap。本物はこんな感じです)にしようというわけです。そして、これも今考えるとものすごくこわーい発想なのですが、玄 関にバットとゴルフクラブを置いておき、万が一格闘になったときにボコボコにぶっ叩いてやろうということまで考えました。なんといっても庭に気色悪い落とし物を見舞われた復讐です。それぐらいのことはしてやらねば。
その日の夜から、僕らは入り口の部屋で寝ずの番を始めました。ちゃんと順番を紙に書き、見張り番を決めておきました。一番最初は・・・わたしと友達の弟。もうこの時には恐怖と興奮が最高潮に達していて、眠気なんて全くありませんでした。・・・と思ったら、友達と僕の弟はこたつの中でグースカピー、爆睡していたものです。さて、見張りのほうなのですが、残念ながらその日は快晴で月が出ていたため、庭も明るく照らされており、泥棒さんは入ってこなかった様子でした。様子でした、というのは、ありがちな話しなのですが途中から寝てしまい、起きたときには朝だったのです。
その日の朝、お母さんがお父さんの会社の用事で出かけようとすると、なんとアパートの怪しいおっさんが家から出てきたではないですか!そこでお母さんは後をつけようとしたそうです。そうしましたら、その男、ただでさえ怪しいのに、家を出てから後ろをきょろきょろ見回しながら、いかにも挙動不審な様子で歩いていき、お母さんは気づかれずにつけることができませんでした。夕方、食事の時に「ねぇ、今日これこれこんなことがあったのよ、やっぱりあなた達の言うとおり、あの家の人かなりおかしいわね、間違いないわ」とノリノリです。こうして、泥棒捕獲作戦は佳境を迎えました。夜、今晩こそ月明かりもないから絶対に来るはずだと言っていたとおり、夜中の1時半頃にブービートラップが鳴り響き、近所中の人が飛び出してきました。直後、玄関に紐を張るために置いてあったブロックを蹴飛ばす「ガラガラガッシャーン」という音が続き、僕らがバットを持って出て行ったときは誰の姿もありませんでした。
結局、なんでかわかりませんが警察のその後の調べで、怪しいと言っていたあのおっさんはついに逮捕されました。逮捕されたとき、食べるものも飲むものもなく、栄養失調と不潔さのあまり死にそうになっていたということです。お母さんは警察に行ってガラス越しに犯人を見たそうですが、よくみるとものすごく体が細くて小さく、よれよれの顔つきだったといいます。警察官は「捕まって良かったんだよ、あんたあのままだったら死んでたよ」とあきれていたほどだったのです。
これが、泥棒を捕まえるまでの顛末です。皆さん、くれぐれも年末は泥棒にお気を付けください。人は「自分の身に不幸は起こらない」と自然に都合良く考える傾向がありますが、不幸は「あなたにも訪れる可能性がある」のです。あ、それから庭に「ン」が落ちていたら、それはあなたの家の愛犬のものではなくもしかしたら・・・戸締まりを確認し、侵入に備えよというサインなのかもしれませんよ。
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