下にすでに書いたのですが、中小企業の経営者もまぁいい加減なのが多くて、実態を知ったらたぶんド肝を抜かれること請け合います。わたし自身中小企業にそれほど長くいるわけではないのですが、投資先の企業の実態調査などの際には調べている途中で恐ろしくなることも度々です。そんなある時、「コイツだけは許せん」と思った経営者がおりました。
そこは資金繰りがうまくいかず、瀕死状態に陥っていた会社でしたが、ブリッジファイナンスを取り次ぎ、ベンチャーキャピタルの投資を段取りし、大手VCから約2億円の調達が決まりました。8月の○日、実行日ですからお楽しみに~と言っていた矢先、ハイエナブローカーに捕まり、「わたしが資金調達してやるからVCなんて断れ」と言われたため、馬鹿なことにそちらを選択して「VCの振り込みを断ってくれ」と言ってきたのです。その時、必死で説得する私に対し「VCなんて株を高値で売りつけるやくざな商売なのに、あいつらに株を渡したくない」などと一蹴。結果どうなったかと言いますと、「資金調達に小切手を切れ」と言われ、5千万円分の先付け小切手を切らされ、その中からまず500万円をブローカーにパクられました。紹介先にも「まず金を渡せ」と言われてさらに500万円をパクられました。これで計1000万円を濡れ手に粟で儲けさせたのです。さすがにあきれ果てて「次に会うときに弁護士を同席させてほしい」と言いますと、「弁護士など必要ない!経験もないくせに偉そうに言うな」と、完全に取り込まれてしまった様子。最終的にはなんと、約1億円もの現金を金融ブローカーに巻き上げられてしまったのです。
ところが、ここからがこの会社のしぶといところで、今度はそのやり口をまねて自分が資金調達を始め、なんとか資金繰りを間に合わせて大手企業に買収されることになりました。買収の株価は50万円。元の発行価格は当然5万円ですから、10倍のバリュエーションです。ちょうど私には、資金調達のお礼として40株の新株予約権が譲渡されていましたから、「社長、買収の話を聞いたのでわたしも予約権の行使をします」と言いますと、「なんで今頃そんなことを言われるんですかねぇ?」と言う。「今頃も何も、もうすぐ行使期限が切れますからその前に払い込みをします」と言ったとたん、「うちには株を発行するつもりはない!」と暴言を吐きました。さすがにぶち切れて、「発行するつもりも何も、商法の280条に書いてあるじゃないか、何のために予約権があるんだ」と言う私に対して彼が言った言葉は「じゃあ、商法に違反したらどうなるって言うんだ?いいよ、わかった、勝手に振り込みすれば良いだろう、その代わりこの会社は捨てて別の会社を始める」。なんという横暴、なんという無知!小さな企業とはいえ、業界では有名なこの会社、コトが起これば一気に信用は失墜してせっかく築き上げてきた顧客との関係も水の泡です。
ではなぜここまでかたくなに新株予約権の行使を恐れたのか、その理由は・・・同じ新株予約権を他の人間にも二重に譲渡して資金調達をしていたのです。わたしから言わせれば、株式ではなく予約権を担保に金を貸すなど開いた口がふさがりませんが、言葉巧みに譲渡するか担保に入れて金を調達したものと思われます。それがバレると怖いので、必死で言い訳を述べていた、という本当に情けない話だったのでした。わたしの「あんたは無価値なものを報酬といって他人にばらまいていたのか?」という言葉もむなしく、本人が宇宙の彼方に逝ってしまっていますから、常識が通るはずもありません。
この横暴を許せるはずもなく、私も「では知人の新株予約権も共同で行使して会社を乗っ取らせてもらう。今いる全ての顧客はこちらに頂いて転売し、あんたも放り出すからそのつもりにしておけ!もし予約権の行使を認めないなら裁判を起こす!」ってな話になり、買い取り側の企業に仲裁に入ってもらってなんとか事なきを得ました。ただ本人も、あまりにも情けない醜態をさらしてしまったことで相当後悔していたらしく、詰められると怖いのでビビリまくっていたそうですが。
ほんとうにまぁ、普通はそれほど相手を憎むことはありませんが、このケースだけはまったくもって許せないほど腹が立ちました。中小企業経営者も昨今の不況下、しんどい事情はわかりますし、たまにはやんちゃしなければならないこともあるでしょう。が、自分を見失ってでも続ける経営は周囲のあらゆる人間にとって大迷惑、とりわけ社員にとっては本当にかわいそうです。まして、あなたとあなたの社員のためにどれほど多くの人たちが努力を続けているのか、そういうことも考えてほしいと思います。
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