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2005/09/12

サラリーマン?ブローカー?

以前にも書いたのですが、一平社員として日々働いているはずのわたしのもとには時折り様々な相談がやってきます。「トンネル会社を作りたいので"クリーニングのできた"会社を買いたい」「ある資金の移動に使いたいので億単位の振り込みができる口座を貸してほしい(偽名口座ではない・・・わたしは○税以外の犯罪はめったに行いませんので)」「中国でガソリンスタンドを経営したいので資金を集めてほしい(おいおい;)」「掛け売りの客がとんだので運転資金を貸してほしい(親しければいくらでもほぼ無利息で貸します)」「手形の割引きを頼みたい(絶対引き受けない)」などなど。

一番良いのが病院のM&A案件でして、つい先日も関東の病院の売り先探しを頼まれましたので、さっそく専門の超有名大手ファンド会社に持ち込んでデューディリジェンスを開始。なんだかかっこいい話のように聞こえるかもしれませんが、実際はかっこいいなんてとても言えたものではありません。だいたい、こういう話を持ち込んでくる人間は一種のブローカー。基本的にブローカーは他のブローカーを目の敵にするものなので、間を取り持つのは一苦労です。そう言うわたしもブローカー、いやブローカーコーディネーターというべきか。それから、売り手にはわけありの法人が多いわけですから、財務諸表もすぐにそろえてくれません。最新の決算書がない、勘定科目明細がない、など基本的な要求を認識していない仲介者もおり、それを整理するだけで結構な時間がかかります。

そもそも、「書類をお渡しする」と言いながら売り・買い掛け、借入の内容、役員報酬の内訳、貸し付け内容などを知るために不可欠な勘定科目内訳明細や税務申告書を添付せず、P/LとP/Sに表紙をつけて持ってくるなど言語道断です。なのに、「書類が足りない」と言いますと「情報がいろんなところに漏れるとまずいので待ってくれ」と言ってくる。役に立たないブローカーの典型的タイプですが、こういうのが10人に8人ぐらいはいるんですね。ですから、売り主と買い主がいてもなかなか成功に結びつくことはありません。その上、書類をそろえられずに話がなくなると決まってこちらに責任を押しつけてきます。「あいつが能なしだから話がなくなった」と言うわけです。

あまり詳しくは書けませんが、紹介料は借金の清算を除いた純粋な売却額の3%程度が相場だと思います。10億で売れたら3千万円と言うわけです。そりゃまた景気がいいのぉ、と思われるほど楽な仕事ではありませんし、万が一本当にヘタをうったら信用問題ですから二度と相談を受けられなくなります。また、買い手には通常弁護士やファイナンス会社がセットになっていて、非常にシビアに審査してきますから法人を買い取ってリビルドするのに必要な資金が出せない場合には買収額がガンガン削られます。当たり前ですね。それと、売り手の希望売却額がたとえば10億だとしましょう、借金が3億あるとしましょう、借金も買い取るとして合計13億です。しかし、買い手に必要な資金は13億ではなくてリビルディング・リエンジニアリング資金としても数億円必要ですから、買収にかかるお金は思った以上にかかるものなのです。そういうわけで、右から左へ何十億もの利益を出して手数料をがっぽり稼ぐという夢のようなことが簡単にできるはずがありません。

教訓:ブローカーたちへ。手数料をがっぽり稼ぎたいなら、頼むからもっと勉強してきてくれぃ!頼むから金に目がくらんでの仲間割れはやめてくれぇ!

追記:タイトルに「ブローカー」と書きましたが、わたしは断じてブローカーではありません。以前某中堅コンサルティング会社在籍中にM&Aを担当していましたので、デューディリジェンスの実務も知っているれっきとしたプロです、はい。

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